誰かが「クリスマスパーティ」をやろう 、と言い出した。 こないだの酒盛りが鬱屈した乗組員の心を癒したのであろう。緊張ばかりでは、いざという時冷静に対処できなくなるのだ。
心的負荷は取り除かねばならないのだ。
館内では着々と準備がすすんでいる。館内放送も♪アヴェ・マリア♪がBGMのように、日がな一日鳴りっぱなしである。
―――なんかイヤな予感を覚える読者がいらっしゃる?―――
JAMATO展望台に、コダイとモリユキが居た。
ロマンティックな雰囲気のなかで 、コクりたいとコダイが彼女を誘ったのである。
モリユキはオリオンの燃え盛るα星に一心に祈っている風である。
「何をお願いしてるんだい?」
コダイは並んで星をながめつつ、左手がモリユキのおしり・・・デハナク、肩にふれよかなぁ〜どうしよっかなぁ〜といった風情で上下運動していた。
「ひ・み・つ・・・くすっ」
モリユキは意味深長な(けっこう不気味な)薄笑いをするだけで、何も答えようととしない。
「あのさ、モリユキ・・・」 コダイが意を決して告白しようとしたときである。
突然JAMATOが激しく揺れて、コダイはモリユキを押し倒す格好になった!
チャ〜〜ンス!ありがとう、シマ!なんて絶妙なタイミングなんだ!オマイはモリユキを諦めてオレを応援してくれるんだな?親友だぜぃ!!では、いただきます!
ってなことを、ほんの0.5秒の間に思い浮かべたのだが、我にかえると同時に強烈な股間蹴りにおそわれ、そのまま失神しかけた。
『コダイっ!!どこに居る!?さっさと持ち場にもどれっ!!敵だっ!!』
シマの怒鳴り声に♪アヴェ・マリア♪の成す術は無かった。
GBER星ですら〜からの 《 超強力磁気ネックレスバリアー攻撃 》であった。
JAMATOは身動きできないのみならず、巨大ミサイルが無数に接近!!
「カンチョー!!背後から分析不可能なナニカがウヨウヨ迫ってきています!!」
「なんだとっ?!」
前門の炎、後門のうようよナニカ、全空のミサイル・・・クヮ〜ッ!!なんてこったい?!
・・・・・
「ふふふふ、どうするね?JAMATOのしょくん。」
「総統、お嬉しそうですな。これをどうぞ」
「!!しゅるつ、君はワタシの楽しみを下らない飲み物などで邪魔する気かね?!」
ですら〜は気の利かない部下を容赦なくぶっ殺してしまった。唐突でやっかいなヤツである。
・・・・・
「なんでアンナモノが出てくるんだ?」
風邪でちょい具合の悪いカンチョーを診にきていたサドが驚きを隠せず大声を出した。
コダイ以下乗組員には何の事かわからない。
「ゲホッ、ゴハッ、ジュルジュル・・・わ、ワシのせいかも?・・・」 と オキタがうめく。
「カンチョー、あんた、まさか!?」 と おののく、サド。
「いや、だって、つい、さっき、館内のBGMに合わせて、ちょびっと歌っちゃって・・・」
「おおおお〜〜絶体絶命ですぞ、カンチョー〜〜」
「いや、ワシは別に構わんのだが・・・・」 ボカッ☆(← サドが殴った音)
コダイ以下乗組員には何の事かわからない。
分析不可能なナニカ・・・≪ 意味不明 宇宙生命体 ハヌキ ≫・・・・
これは知る人ゾ知る、知らない人は知らん、人の思考をエネルギーにして成長する生命体である。脳に直接、根を張るので一度引っ付いたら抜けないしろものである。しかも、ただ一人を除いては姿が見えないのだ。じゃまくさいのは、こいつってば、のべつ幕なし意味不明の駄洒落連発するのでうっとぉしいのと、思いもよらない『言霊』で過去にタイムスリップさせられてしまい、体内時計が狂いまくり、時間軸がねじまがって、人間関係もわやくちゃになってしまうことであった。
ね?そんな恐ろしい生命体に寄生されちゃぁ大変なことになるでしょ?
っつうこって、オキタは不承不承、コダイに指示を出した。
「じゃさ、しかたないから〜、前進すればぁ?」
「カンチョー、お体の具合悪いんですか?」
「まぁ、ちょっとね・・・・」
カンチョーだけでなく不安そうな、イヤそうな表情でコスモレーダーで情報を伝えるモリユキ。
モリユキ!怖いんだな!大丈夫だ、オレが守ってやる!!) コダイとシマが同時に思った。
宇宙服を着込み、灼熱地獄に必死で耐える。あならいざ〜が温度変化を刻々と伝える。
「・・・・・アト 2分デ センガイ塗料ガ トケハジメマス・・・・」
意味不明迷惑生命体ハヌキの団体に追われJAMATOは無謀にもオリオン座α星の火炎に突っ込んでゆく!!
やったっ!!
ハヌキの集団はα星に向きを変えたのだ!
( なぜっ?) ← 誰の失望の声でしょぉ?
α星は 『願い星』 である。無数の人々のさまざまな “思い” が渦巻く 《思念》 の星なのである。
JAMATO乗組員のちゃちい思い (たとえば〜モリユキのおパンツもっかい見たい〜とかさ) なんかより、巨大な思考エネルギーの塊なんである。
哀れハヌキはα星に飲み込まれていった。
≪ ハヌキ アルファルファ〜キラ〜〜イイィィィ ≫ 絶叫が響いているが宇宙空間では届かない・・・
カンチョーだけが耳を押さえて涙していたのだった。 なぜでしょぉ???
だが、ほっとしたのも束の間、>
イレギュラーの巨大コロナがJAMATOを襲う!!
「コダイ!はどー砲でコロナを撃て!!」
HADOUHOU!
・・・・・
そして、静寂・・・・
再びオリオンの三ツ星を見つめるモリユキは小さくつぶやいた。
「・・・ チッ ・・・」
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