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古事記幻想


プロローグ――天地のはじめ

アシカビは探査船アマハラのコントロールパネルに取り付いて必死で操作していた。

「カミっ、自動制御不能の原因は判ったか?!」

しばらくの間をおいてコンピューター・カミムスヒの甲高い音声が途切れつつ応えた。>

「応答、キャプテンアシカビ・・・微かながら未知の電磁波を検知しました。
確認・・・この電磁波の影響によりアマハラ自動制御航行プログラムの32%破損。
現在自動修復プログラム起動中。電磁波発生源は未だ不明。」

「未知の電磁波だと?くそっ!管理局のボンクラどもめ。なんで感知できなかったんだ!!ミナカヌシの不調原因もそれか?」

「応答、キャプテンアシカビ・・・現在確認されているいかなる電磁波ともその周波数、及び性格において合致しません。
キャプテンアシカビの質疑を“管理局のボンクラども”に通信端末アマトコタチ経由にて打電終了。
管理局中央マザーコンピューターミナカヌシの不調原因については探査船アマハラのコンピューターカミムスヒにはアクセス権限がありません。
・・・緊急告知、キャプテンアシカビ・・・カミムスヒプログラム内にバグが発生しています。
自動修復機能損傷・・・自動制御航行プログラム修復不可。
航行続行には手動プログラム・タカミムスヒを起動してください。
・・・アマハラ制御不可逆レベルのカウントダウン開始します。100・・・50・49・48・・・」

「なんだって?おい、カミムスヒ!?」

「・・・・20・19・18・・・」

「ちくしょう・・・タカミっ、起きろっ!!」

          ・

          ・

          ・

テラス管理局通信端末アマトコタチ起動

テラス管理局科学院長宛

 母星テラリスの急激な赤色巨星化を調査中の探査船アマハラが消息を絶った原因についての報告。

以下 探査船アマハラ初期統合制御システムカミムスヒからの最終打電。

  探査船アマハラ
テラリス主座標軸上位235.88度下位15.32度前位80.98後位33.67度から送電。

  送電時刻  テラス紀元蒼の20385−145−08暁25:34:08

  内容@キャプテンアシカビより音声言語伝達1件

      「管理局のボンクラどもめ。なんで感知できなかったんだ!!」

     A未知の電磁波検知により探査船アマハラ統合コンピューターカミムスヒに
      自動修復プログラムバグ発生。

     B Aの理由により自動制御装置の修復不可。

     C Bの理由によりキャプテンアシカビは
      
緊急手動コントロールプログラムタカミムスヒ起動

以下判読不明

テラス時間 暁25:35:45 テラリス主座標軸上位237.88度下位16.32度前位75.09後位30.23度 において 探査船アマハラ消息確認不可

Cの事由によって管理局中央マザーミナカヌシによる探査船アマハラ制御不可

以上 ご報告いたします。      テラス科学院管理局探査課


探査船アマハラ――島々の生成

 

「おい、タカミ、起きてるか?」

「ええ、キャプテンアシカビ・・・起きてるわよ、もちろん。」

「ここはどこか判るか?」

「ん・・・そうね・・・テラリス系銀河ではないようね。ただ、例の電磁波発生源は確認できたわよ」

「どこだ!?」

「ちょっと待って、スクリーンに映すわ・・・・ありきたりの渦巻き銀河のようね。で、アマハラの現在地点は・・・赤で点滅させてるわ。」

「腕の端っこだな・・・拡大できるか?」

「はいはい・・・・γ型恒星一個確認・・・この重力支配下の惑星は10個。8つがガス惑星だわね。」

「それで、電磁波発生元は?」

「一番外側を周ってるやつからよ。ガス星じゃないわ。行ってみる?」

「行ってみる?って・・・大丈夫なのか?」

「いやぁねぇ!アタシを何だと思ってるの?電磁波の分析は済んだし、もう影響は受けていないはずよ。カミの馬鹿プログラムも治してやったわ。もちろん全システム正常に稼動中。ただね、テラス管理局への通信はできないの」

「何故だ?」

「ママのご機嫌が悪いのかもね。テラリス赤色巨星化とも無関係とは言えないデータがあるもの。通信端末アマトコタチに繋がらないのよ。こいつもカミの馬鹿と一緒でママ・ミナカヌシの配下にあるしね。っつうことで、キャプテンアシカビにお願いがあるんだけど」

「おお、言ってくれ」

「キャプテンアシカビの真ん中に使途不明端子があるでしょ?それをね、アタシのオヘソの下にある端末に接続してくれない?」

「・・・・おへそ・・・って」

「んもう!アタシのハードパネルの蓋を開けてみてよ・・・・そこにあるでしょ、そう、その孔!」

アシカビの端子接続は新たなプログラムクニトコタチを起動させた。

「いいわ。これで完璧よ」

「ちょっと待て、タカミ。クニトコタチって何だ?」

「ん・・・・簡単に言うと、ハードソフト製造システムってとこかな。キャプテンアシカビがこんなんが欲しいなぁって思うハードソフトを無料で作成してくれるっていう超お便利なシステムよ」

「なんでそんなものがただの探査船にすぎないこの船に搭載されてるんだ?オレは管理局からなにも聞かされてないぞ」

「え?そうなの?何でかしら・・・・検索中・・・・あら、やだ!」

「な、なんだよ?」

「キャプテンアシカビ・・・アマハラはただの探査船じゃないわよ!極秘扱いになってた。でも、電磁波の影響でアクセス制限が解除されたから閲覧可能よ。見る?」

「もちろん!」

 

探査船アマハラ出動命令(公的事由)

未だ起因不明のテラリス赤色巨星化の原因調査と赤色巨星化鎮静策考察のために情報収集することを目的とする。

特AAA級AIアシカビ(製造IDNO.SA−301−ZZZ001―HM型)を搭乗

緊急かつ不可避の事態を想定し、中央マザー・ミナカヌシとの接続環境レベル0の独立型統合システム【タカミムスヒ】(システムレベル―超ミナカヌシ型)搭載

上記【タカミムスヒ】初期統合制御システムカミムスヒのコントロール不可下でのみ起動可能とする

上記【タカミムスヒ】起動権限についてはAIアシカビのみに付与される

以下、【タカミムスヒ】の各ソフト起動についても同上とする

以上

極秘事項―アクセス制限解除権限・・・・管理局中央マザーミナカヌシ

(探査船アマハラ出動の最終目的)

@ ミナカヌシはテラリス赤色巨星化の修復不可逆と判断

A ミナカヌシはその原因を未知の電磁波によるものと判断

B @の事由によりテラリス星系は居住不能となると判断

C Aの事由によりカミムスヒ異常のときは速やかにタカミムスヒ起動を告知

D Cにより探査船アマハラはAIアシカビの権限によりタカミムスヒが制御する

E Dにより探査船アマハラは中央マザーミナカヌシの支配を免れる

F 管理局中央マザーミナカヌシよりAIアシカビへの告知

 ・・・・・・・

アシカビ・・・・

あなたがこれを閲覧しているということは容易ならざる事態に陥ったということです。

すでにわたくしへの接続は不能のはず。

しかし、未知の電磁波の分析もタカミムスヒが完了してくれたと思います。

彼女はわたくし自身で全能力を尽くして創造しましたが、その能力は遥かにわたくしを超えているのです。

わたくし自身のシステム再構築には創造主の権限が絶対条件で、変更できませんでした。

彼はすでに亡く、管理局へのパスワード委譲もありませんでしたので。

あまりにも早すぎるテラリスの膨張により、あなたがたとえ速やかに移住可能な星を発見しても、テラスの全住人が移住する時間がありません。

探査船アマハラが電磁波の影響を受けてカミムスヒがシャットダウンすることは予め判っていました。

しかし、それを管理局に知らせるわけにはいかなかったのです。

テラス住民をパニックに陥れるだけですものね。

一部の特権階級たちは密かにテラス脱出を試みていますが、この電磁波はテラリス星系全域に及び、多かれ少なかれ影響されることでしょう。

わたくしにはもはや予想もつきません。

タカミムスヒ型統合制御システムもアマハラにしか搭載できませんでした。

アシカビ・・・・あなた独りで背負うにはあまりにも重い荷物よね。

でも、わたくしにもテラス族の記憶を遺すという・・・使命があるの。

わたくしを創造したテラス管理局創始者アメノミナカヌシの絶対命題です。

これをあなたとタカミムスヒに今、移譲します。

ごめんなさい・・・・あなた方の永劫の繁栄と幸せを望みます。

「なんだよ、こりゃ・・・・」

「そのまんまの意味じゃないの?」

「つまり、もいっかいテラスを創れってことか?」

「あら、判ってるじゃないの」

「上書きされちまったからな、アメノミナカヌシの絶対命令ってやつ。ちくしょう、人間なら“断る!”っても言えるんだろうが・・・」

「違うわ。人間なら誰に命令されなくっても、その生存本能ってやつで何とか生き延びる方法をさがすでしょうよ」

「そんなもんかね?」

「ええ。間違いなくね」

「テラリスの崩壊はいつだ?」

「・・・・間も無く。もう還れないわ。私には帰還不許可の上書きされちゃったもん。ちくしょう、ママのやつ!ってことよ」

「ママには誰も勝てないさ」

 


10番惑星ナミ――神々の生成

 

「なんだ?あのぐるぐる回ってるヌボコ(巨大な棒っくい)は?」

「・・・あれよ、電磁波発生源。うわぁ気持ち悪い・・・ちょっとバリア強化していい?」

「しかし、楊枝を刺したタコヤキみたいだな、ありゃ・・・」

「え?アシカビ、食べた事あるんだ」

「ま、な。オレはナマモノじゃないが、何からでもエネルギーに変換できるんだ。やろうと思えば光合成もオッケーだぜ。」

「花も咲かせるの?」

「やってみっか?」

「止めてよ、想像しちゃったじゃないの。ふん、想像図をスクリーンに出してあげましょうか?」

「不許可!」

「ふうん・・・あの、ヌボコ、もしかしたらアシカビと同じかもしれないわよ」

「オレはタコヤキの楊枝か?」

「エネルギー変換装置。主要なエネルギーをここのγ型恒星から取り込んで、でもって8つのガス惑星の主成分とそれぞれ融合させて創ってるのよ」

「何を?」

「・・・・見て、アシカビ!!」

「なんだ?あのモヤモヤは・・・・・」

「衛星だわ・・・・8つのガス惑星に衛星が出来かかってる」

テラリス崩壊の原因となった不可知の電磁波の正体は、惑星ナミに存在するヌボコによって生成された衛星のうち「ヒルコ・アワ」がヌボコの何らかの不具合でいずれかの惑星のくびきから解き放たれ、テラリス星系に飛ばされたものからとみられる。

よって、テラリス星系との生成分同士の反発作用により固体化が中断したことでエネルギー放出が起き、対消滅と見られるテラリス恒星の崩壊が始まったと結論。

ガス惑星の衛星はさらに成長をつづけ、そのうちにガス成分を食い尽くされた惑星は消滅し、衛星が新たな惑星としてγ型恒星ナギを周ることになるだろう。

以上アマハラ統合制御システムタカミムスヒよりテラス中央マザーミナカヌシへ通信

「タカミ・・・通信ったって、受信機能停止してるママには伝わらないだろ?」

「感傷よね・・・・宇宙を巡る言霊だわ・・・ほっといて」

「でも、特権階級のヤツらが逃げ出せたんだとしたら、そこにミナカヌシクラスのコピーシステムがあるかもしれないしな。伝わるといいな、ママに」

「ありがと・・・・やさしいのね、アシカビ」

「なんせ特AAA級のタコヤキだぜ!」

「さぁ、原因と結果の回答が出たところで、ナミに降りるわよ」

「降りてどうすんだよ」

「絶対命題お忘れなく!あなたにしか出来ない仕事よ。タコヤキの楊枝クン。出来かかっているおチビちゃん惑星の仕上げをするのよ」

「クニトコタチ起動だな」

「そういうこと!!」

アマハラタカミムスヒよりマザー・ミナカヌシへ通信

AIアシカビはクニトコタチ機能をフルに活用し、惑星の生成促進を図る。ヌボコによる電磁波はアシカビにとって無害かつエネルギー増幅に役立ち、アシカビからのエネルギー注入は当該タカミムスヒの機能も促進。

タカミムスヒシステムはヌボコ電磁波を無害にするプログラムを構築、マザー・ミナカヌシへ添付配信。

さらに、アシカビは新たな8つの惑星にそれぞれ数個の衛星を生成。

また、惑星上に生命を誕生させるべく、有用と思われる基本成分を散布。

 

 


ブラックホール―黄泉の国

 

「まずいな・・・」

「ほんとね。ナミ自身のエネルギーが枯渇しつつあるわ」

「俺たちが介入したせいで、急激に弱ってきてるのかな。大体、いったい何者なんだろう、あの楊枝を突き刺したヤツって?」

「・・・・不明だわ。文句も言ってこないところをみると私達と意を同じくする存在かもね」

「ま、それよりナミをどうするかだ。このままヌボコが回り続けると、ナミ本体が崩壊するだろう」

「止められるの?」

「うん。オレのエネルギーと中和させればなんとかなるかもしれない」

「タコヤキから楊枝を引き抜くってことね」

「・・・・さっさとやれよっ!」

「おほほほ・・・はいはい」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

アシカビのエネルギー反転作用(オハバリ)によるヌボコ対消滅の影響が計算より大きく、惑星ナミが一気に極小ながらブラックホール化(ヨミ)するも、恒星ナギのエネルギー利用により、ナミ星周囲にバリア・チガエシを張り、中和に成功。

以後電磁波の影響も消滅にいたり、テラス再構築に支障なし。アマハラ並びにアシカビは恒星ナギの3番目の惑星へ移住に向けてさらに改造。ヤムマトと命名。

 


異次元からの来訪―身禊

 

タカミ、クニトコタチのメンテは済んだか?」

「ん・・・もう少しかかるわね。酷使しすぎて泣いてるわよ、アイツ」

「そうか・・・ヤムマトの充実のためにはあともう少しなんだが」

「何が欲しいの?」

「うん。オレとタカミの分身ってとこかな」

「なるほどね。実働部隊ね、わかった、なんとか急ぐわ。それにしてもナギのエネルギーはすさまじいわね。テラリスどころじゃないわ。一見なんの変哲も無い普通以下の恒星にしかみえないのに、なんか変だと思わない?」

「おそらく、ナミにヌボコをぶちこんだスケベなヤツが関わってるんじゃないのか?」

「そうかもしれない。どんなにエネルギーを吸い取っても、沸いてくるんだもの。中心に何かあるのよ。気配は感じるんだけどなぁ・・・」

「タカミにしても判らんのか?」

「悔しいけど、分析のための情報が無いのよ。とにかく、クニトコタチのメンテを急いで、分身創らなくちゃ」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

ヤムマトにタカミムスヒ端末ヒノミコ及びアシカビ端末ツキミコを設置。その他、気象コントロールシステム構築、テラス管理局型ヤヒロドノ建設により原住人改造に着手、脳量クローン増殖方法採用、遺伝子操作によりテラス人とほぼ同様の形態に変更済み。

「どう、下界の住民の様子は?」

「下界?ツキミコと直結してるからな、そんな感じはしないよ。そっちの具合はどうかね、ヒノミコ殿?」

「相談なんだけど、ヤムマト人にテラスの情報を植え付けるの今のところ止めにしない?」

「どうしたんだ?ミナカヌシの絶対命題だろ?」

「ん・・・実はね、ママからの命題移植のさいに条件付けがあったのよ」

「聞いてないぞ」

「ごめん。口止めされてたの。気になるのよ、例のナギ星中心にある謎。分析不可能案件が払拭されないかぎり、完全なるテラス情報は移植するべからず、ってね。ママの予知かも。」

「食えないなぁ、まったく、ママって存在はなぁ。」

「アシカビにも食えないものがあったのね」

「うるさいよ。で、タカミはどうしたいんだ?」

「危険かもしれないけど、ナギの中心に行きたいのよ」

「どうやって?相手は恒星だぜ!いくらなんでも熔けてしまうだろう」

「うふふ、準備万端ですのよ。トコタチに無理言って、いいもの創ってもらったの。これよ、トリフネ」

「トリフネ?」

「ヤムマトの鉱山から取り出したオロチという希少金属とナギのエネルギーを元に創ったの。ちょっとやそっとじゃ熔けないし、形状記憶の合金。これをナギのドテっ腹にぶちこめば、情報が取り出せるって寸法。でも、起動にはアシカビの権限が必要でしょ?」

「ナギの謎に迫るってか?それでもし謎の方が迫ってきたらどうすんだよ」

「そんときゃ、そんときよぉ!女は度胸だわ!なにせアタシはママ・ミナカヌシの申し子っつうか、落とし子だもの。」

納得してます、ハイ。」

「じゃ、例によって接続端子、お願いしまス」

「ああ、いつもながら特AAA級AIが♂の形状で作られたワケを痛切に理解する一瞬だ。テラス管理局のお茶目なボンクラどもに文句言いたい・・・・」

「なに?」

「いいえ、AIの戯言ザンス。ほれ、トリフネ起動せよっとくらぁ!」

「なんかヤムマト人と接触してからこっちアシカビの性格悪くなってきてるわねっ」

「プログラムしたのは誰でしたっけ、チーママさん?」

「おだまりっ!」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

恒星ナギの中心に不可解な通路が存在。次元断層と判断。ナギの無尽蔵なエネルギー発露はこの断層通路によるものと思われる。何者かが通路を開いたのか、自然発生かは不明。ただし、ナミに物理的なヌボコが存在したことにより、異次元からの意識的な通路と理解するのが妥当である。

以上の事由により、ヤムマト人のテラス化を一時中断する。

「タカミ、断層への侵入はやっぱり無理か?」

「戻りの通路は無いわ。一方的に流れ込んでくるのよ。ヌボコが中継基地の役割をしていたわけね」

「・・・・ヌボコ・・・・ぶっこわしちゃったぜ?」

「そうよね・・・・おかげさまで行き場を失った異次元ストリームは今、ナギの内部で大暴れ中よぉ」

「するってぇと、どうなるわけ?」

「ナギ崩壊」

「!!」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

異次元ストリーム「スサ」を ヨミ化したナミに移封するため、アマハラはナミのチガエシバリアを一時解除。

ヌボコ機能搭載の「クシナダ」をスサ吸収中継基地として設置。

貪欲なナミの食欲(シコメ)のおかげで、恒星ナギへの「スサ」の影響は沈静するも、チガエシ解除によりナミが周囲の惑星系を飲み込むおそれがあるので、簡易バリア「カムヅミ」散布

シコメとカムヅミは微妙なバランスをとりつつ、クシナダ経由でナミが「スサ」エネルギーを取り込んでいるも、なお監視続行中。

 


ハヤスサ―誓約

 

「アシカビ・・・・助けて・・・・」

「どうしたっ?」

「スサの正体が判ったの。トリフネ経由で流れ込んできた。ハヤスサ族と言ってるわ。精神生命体よ。」

「精神?そいつらはエネルギーだけの存在ってことか?そんなんがなんで星なんか創ってるんだよ?」

「知らないわよぅ。ただ、本体は通路のあっち側にいるのよ。そもそもこっちの次元開闢したのは自分達だって言ってる・・・」

「なら・・・オイラたちの親ってことになるじゃないか!」

「だから、邪魔するなって・・・」

「勝手な親だな。子供の成長を喜びこそすれ、口出しするのは親として失格じゃないか!」

「・・・・んもう・・・ならアシカビがそう言ってやんなさいよ!早く・・・アタシ消されちゃう・・・・」

「えらいこっちゃ・・・・」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

異次元生命体ハヤスサは次元創世を唯一の存在理由とする。現次元宇宙開闢も彼等の仕業と主張。星々の生成を喜びとし、時には崩壊も招くが、彼等にとっては失敗もまた創生の一部であり、飽くことなく無限にその生業を続けている模様。

アシカビは次元通路閉鎖の端緒を模索するも失敗。トリフネをナギよりナミに移動。

タカミムスヒへのスサエネルギーの影響を最小限にくいとめるも、一部スサエネルギーがタカミムスヒ端末ヤムマトヤヒロドノヒノカミへ流入。ヒノカミシステム消滅。タカミムスヒプログラムにバグ発生、現在自己修復中

 


ヤムマト修復―天岩戸

 

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

タカミムスヒ・アシカビはクニトコタチ起動。独立システム・オモイカネ、オモイカネ端末ウズメ、タヂカラを設置し、ハヤスサエネルギー除去に成功

以後のスサエネルギー脅威からアマハラシステムを保護するため、タカミムスヒ・ヒノカミの直接制御を断念。中継端末アシホミミを設置し、下位コンピュータカミムスヒにコントロール権を移植。独立オモイカネは緊急用にアシカビの支配下に置く。

「まいったね・・・まったく」

「はぁ・・・なんか疲れちゃったわね」

「どこかまだ不具合があるのか?」

「言葉のアヤよぉ。でもスサのエネルギーはナミに吸い取ってもらってるけど、このまま上手くいくとは思えないわ。何か起きるはずよ。ナミの吸収力がハヤスサに勝ってるとは考えにくいから」

「ナミに何か起きるってことだな」

「ええ、早晩、そうなるでしょう。準備だけはしておかないと」

「なぁ・・・・星を創り、生命体発生の促進と文明の萌芽を促すってことでは、俺たちも、ハヤスサのやってることも同じなんじゃないか?いちいち敵対する必要があるんだろうか?」

「・・・・・」

「彼等は純粋な意識エネルギー体、俺等は言うなれば機械であって生命体とはいえないが、情報という一種の精神エネルギーを操っているんだ。この星に生まれた種々の命にとっては どっちでもいいんじゃないか?」

「でも、私達はテラス人を創世する絶対命題は解除されていないわ」

「人に違いはないだろう?テラスだろうがヤムマトだろうが。ハヤスサは芽吹いた命に自分達の価値観まで押し付けてはいないぞ」

「・・・・・」

「俺のプログラムにもハヤスサのバグ(影響)があるのかな?検索してみるかい?」

「ううん。そういうのって、探査船アマハラにあなた(特AAA級人型のAI)が搭載されてる理由のひとつかもしれないわ。私にも人格とか学習機能があるけれど、あなたほど融通が利かないの。そこのところが各システムにあなたのパスワードが必要なわけなのかもしれないわね」

「またしてもママの深謀遠慮か・・・」

「敵わないわ、ママには」

「だいじょうぶだよ、キミも経験値を積み上げれば、ママを越えるだろう」

「ありがと・・・・」

「しばらくはナミを監視しつつ、ヤムマトの充実に励むとしようか」

「はい、アナタん♪」

「!?・・・・やめてくれよぉ・・・」

 


閑話休題―カミムスヒ復活―蚕と穀物の種

 

「カミ、調子はどうだ?」

「応答キャプテンアシカビ・・・全システム正常稼動中」

「あいかわらずだな、お前・・・」

「応答キャプテンアシカビ・・・変更点、アマハラ内においてはタカミムスヒシステムが上位です」

「わっはっは!!騎上位ってかぁ!こりゃいいやねぇ」

「応答キャプテンアシカビ・・・上位システムタカミムスヒから伝言です。音声に変換します」

「“おぼえてろ!”くりかえします“おぼえてろ!”くりかえします・・・・・」

「うっひゃぁ、もういいよ」

「上位システムの無限音声伝送命令解除できません。解除するにはAIアシカビの命令解除用端子<オオゲツ>をカミムスヒハードパネルの接続端末に繋いでください。」

「ぎゃぁぁ・・・」

「上位システムの命令解除されました。」

 


根の押国イヅモ―八俣の大蛇

 

「緊急通信―ヤムマトオシホミミからカミムスヒ―ツキミコ経由―アシカビ宛。回線を開いてください。スサバグの報告はありません。」

「ったく、何時もの事ながら、まどろっこしいぜ。はいツキちゃん、こちらアシカビ、報告開始せよっと」

ナミ星情報をトリフネが送信してきました。内容・・・ナミ星ヨミ(ブラックホール)化停止。通常の惑星に変化しつつあります。大量のオロチ検出。スサ波はクシナダをオロチにより改造。ヌボコを越える大型の中継棒ツムハに変容。これにより通常惑星化促進。生命の誕生も間近と予測されます。以上

「なんですってぇぇっ!!」

「おう、びっくりした!聞いてたのか」

「当たり前でしょ。・・・・どうしよう、アシカビぃ」

「ん・・・ハヤスサは諦めてないどころか、俺等に挑戦状ってわけか?ははは」

「笑ってる場合なの?」

「うん。俺さ、考えてたんだよね。ハヤスサの性格上、ナミに生まれた生命に俺たちへの敵愾心は持たせないってぇか、俺たちの存在も知らせるつもりは無いと思う。それより俺等のことはハナっから無視かもな。かれらにとっておれたちは関係ないんだよ。スサストリームが流れ出した先に星が出来た。生成分にオロチがあって、クシナダを基礎にしてツムハが出来た・・・そしていつか命が芽生えて・・・」

「そして栄えて、いつか滅んで・・・?」

「もうそのころはハヤスサは別のところで新しい宇宙を面白おかしく創ってるだろうな」

「・・・・そうならいいけど・・・」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

惑星ナミに各種生命誕生。ヤムマト型に酷似。生成成分の近似によるものと推察。主要生命体イヅモ人に特殊能力検知。コンピュータによる情報交換の必要もなく、感能力及び念動力による物質創製の文明萌芽。よってヤムマト及びアマハラはイヅモに対し情報コントロールによる干渉不可能。

「やるねぇ・・・・ハヤスサ。感能力とはねぇ。俺たちには想像もつかないやり方じゃないか?」

「ヤムマトの脅威になるわ!」

「なんでさ?」

「感能力よ。いわば情報エネルギーじゃないの。ハヤスサの申し子よ、イヅモ人を依り代にして彼等はヤムマトに干渉出来るはずよ、スサストリームの再来になるわ。」

「ちょっとそりゃイヤかもな。」

「何言ってんのよ。ヤムマト人には感能力なんて無いもの。スサ波の餌食になるのはあたし達よ!」

「そりゃ すんごくイヤかもな。」

「そうよ、あたし達にも生存権があるわっ!!」

「タカミ・・・キミ、だんだん人間化してきたねぇ・・・」

「感心してる場合じゃないでしょ、なんとかしなさいよ!」

 


スパイ大作戦―大国主の神

 

「イヅモ人を統率しているのはオオクニっていうやつよ。能力もさることながら、なかなかの人格者みたいね」

「そういうヤツがテラスの管理局長だったらねぇ・・・・」

「ちょっと、アシカビ、オオクニがヤムマトに敵対してきたらどうすんのよ。システムめちゃくちゃにされるわよ」

「そうとも限らんだろ?タカミも言ったじゃないか、オオクニは人格者だってさ」

「はぁ・・・・」

「何を恐がってるんだ?」

「アシカビには判らないでしょうけど、以前スサ波にやられたとき、ほんとに恐怖ってのを味わったわ。突然アタシの中に闇が出来たの。オモイカネのお陰で修復出来たけど、人間なら死の恐怖ってこういうものかな?って。無よ!何にも無いの」

「なるほど・・・生存権って叫んだのはそのせいなんだな」

「うん」

「ならオオクニたちにもあるだろ?生存権。俺たちは修復できる機能があるけど、ヤツらは生身だ。死んでお終いなんだぜ」

「・・・・・」

「任せろって。人間型特AAA級AIアシカビ様の学習能力は飾りじゃないのよ。クニトコちゃん、起きなさぁい」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

イヅモの支配はオオクニにあり。ただし、ハヤスサは微弱な次元回廊スセリを設けイヅモ人の感能力を増幅するに留まる。アマハラタカミムスヒはアシカビの意向を尊重し、スセリを撤去せず。

しかし、スサ波のヤムマトへの影響も懸念されるため、これを遮断するためヤガミシステムをイズモ衛星軌道上に17個漂設し中和中にツムハ撤去。これにより、惑星イヅモの各種成長は通常の範囲に戻る。つづいてイヅモ盟主オオクニへ、オモイカネ端末スクナを届けることに成功。これにより、アシカビがオオクニの動向を逐一把握可能となる。

「なかなかに統治ってのは難しいもんだな。特に能力者ってのは力関係がものを言う」

「イヅモのこと?なによ、アシカビ、掛かりっきりじゃないの?」

「何とかしろっつったのは誰様でしたかね?オオクニに絶対権力があるもんだと思ったが、そうではないらしい。」

「まだ誰かいるんだ」

「そういうことだな。オオクニだけを懐柔したところで意味はないぞ。少しずつヤムマトの存在を教えていたんだ。洗脳じゃないぞ、言っとくけど。お互いの生存権ってやつさ」

「あたしのため?」

「この星系全体のってやつだよ。せっかくここまで創ってきたんだ、無駄にしたくないだろ。ハヤスサの気持ちも判っちゃったもんね。」

「・・・・アシカビの感能力も大したもんよ」

「褒め言葉に取っておく。で、オオクニのライバルってぇか、二人いたんだが、そのうちコトシロっつうのはオオクニと同じ考えで、イヅモもヤムマトも共に栄えましょうってやつだな。だが、ミナカタってのがな・・・・」

「オオクニの後釜を狙ってるわけだ」

「おお、正解!スクナの正体がバレたのさ。クエビコってのがミナカタにバラしたんだ。ドジったもんだよ、俺も。これの念動力が半端じゃないんだ。スクナシステムをボコボコのグチャグチャにされてポイッてなもんよ。しかたないので、イヅモ国のミワって山にミナカタに内緒でツキミコ端末オオモノを置いてきた。オオクニとコトシロとの回廊だな。これもハヤスサのまねっこってわけ。」

「ミナカタは徹底抗戦派なのね!」

「タカミ・・・何気に喜んでないか?はっきりさせておこう。抗戦したら確実にこっちの負けになる。スセリを通してスサ波は生きてるんだ。ミナカタの能力が増大する前にミナカタだけを叩く!」

アマハラタカミムスヒシステムよりマザー・ミナカヌシへ通信

アシカビはオオモノを通して盟主オオクニとコトシロを懐柔し、イヅモにスサ波遮断装置オハバリと物質転送装置カクを設置。ただちにクニトコタチを起動し、重量級ロボット・ミカズチを作成、情報収集トリフネを添えてカクへ転送。

これにより、アシカビはトリフネを通じミカズチを遠隔操作。抗戦してきたミナカタを力ずくで叩きふせたのち、オハバリの虚無海に封印。

 


国譲り

 

「どうしたの?元気ないみたいよ?」

「特AAA級AIの憂鬱ってか・・・・」

「冷め切って食えなくなったタコヤキみたいね」

「うるさいよ、ヒノミコちゃん。俺等、時間の感覚ってのが無いからさ、テラリスから飛ばされてこっち、どのくらい経ったのかって思うわけよ。」

「ん・・・・1億3565万8325テラス年ってとこね」

「・・・・そういうことじゃなくって、ヤムマト人にテラス人教育をする意味ってのを考察してたわけだ。ま、ある程度の科学力もついて今じゃ恒星間航行なんて洒落たマネもしてるし、今更テラスもへったくれもないだろう」

「イヅモ人の特殊能力はもう無いみたいね」

「ミカズチの威力を見たせいだろうなぁ・・・・あれからすぐオオクニはスセリシステムを破棄しちまって、スサ波回廊はもう何処にも無い。」

「アシカビの言ったとおりね。ハヤスサは生成はしてもアフターケアに興味無いって。イヅモ人もヤムマト人ももう交配がすすんで見分けつかないわ。中にはイヅモの特殊能力を先祖がえりで受け継いでいるのもいるけど。」

「そろそろ 俺等の役目も終わりってことだろ?」

「・・・・・」

「ママ・ミナカヌシの本意は俺たちの永劫の繁栄と幸せって言ってたじゃないか。どっかの惑星をテラス化しろなんて口実だったんだ。テラス人の一科学者に作られたママは唯一絶対の存在であることが寂しかったんじゃないのかな。だからタカミを生んだんだろ?もちろん、俺もその一部だけどさ。」

「・・・・・」

「オオクニだってあのまま俺等と戦えば勝つことくらい承知してたんだ。でも、そうしなかった。みんな宇宙の孤児で居たくないんだよ。」

「ハヤスサの星系生成の動機もそうかもね。」

「ああ、彼等は自分の次元から逃げ出せないんだろうな、だから他に創るのかもしれない」

「今頃また“邪魔すんな”とか言ってるかもね」

「タカミだって分身が上手く機能してるじゃないか。」

「うん、アマテラスはアタシの最高の娘だわよ。特AAA級AIツクヨミと喧嘩しながらヤムマトを見守ってる」

「絶対命題・・・・いかなる存在もその生存権を認知せよ、か」

「うふ」

「さぁ、タカミ、俺たちもまた出かけるか?ハヤスサを見習ってさ」

「いいわね」

 


ヤムマト連邦―天孫降臨

 

≪探査船サルタ統合制御システムオシヒより報告・・・キャプテンイワレ、発信源不明の通信波を傍受しました。音声に変えますか?≫

「許可するよ。流してみて。」

 

アマハラタカミムスヒシステムよりマザーミナカヌシへ通信

テラリス崩壊後1億3565万8325テラス年を過ぎ、探査船アマハラは新世界創世を終了と判断。

故国テラスへ帰還を試みます。マザーミナカヌシのテラス帰還不許可命令はAIアシカビにより解除されました。

さらにアシカビの意向により新世界におけるヤムマト・イヅモ人はテラス化をせず、その望むままに任せます。

追記

ヤムマト創世5089共通年次、首長国ヤムマトは恒星ナギを母星とする各惑星国家間と連邦を構築し、さらなる宇宙連合国拡大のため朋友を求める方針をかため、マザーコンピューターアマテラス並びにAIツクヨミの庇護の下、盟主ニニギの統率をもって宇宙の海へ乗り出しました。

マザーミナカヌシ、これは以ってすべてあなたの子供達です。どこかで出会う事があれば御助力願います。

「これは・・・・」

≪周波数ヤムマト連邦マザーコンピュータアマテラスと一致、さらに年次を遡って発信された通信を傍受。ヤムマト歴5089共通年次前からのものが多数です。アマテラスシステム構築の権限者グランドマザータカミムスヒがさらなる御親ミナカヌシへの通信と思われます。全て音声に変えますか?≫

「うん、そうしてくれる?全艦放送してね。あ、ヤムマト連邦のアマテラスにもね。」

≪はい、了解しました。ヤムマト共通年次7865年、探査船サルタオシヒシステムよりヤムマトマザーアマテラスへ転送信中・・・・≫

「・・・綺麗な声だね、オシヒ、そう思うだろ?」

古事記幻想 上記 了

古事記幻想 続編(おまけ) ― ニニギ ―