天地のはじめ |
天地(アメツチ)が初めて現れ動き始めた時に高天原(タカマノハラ)に成った神の名は、 天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、次に高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)、 次に神産巣日神(カミムスヒノカミ)、この三柱の神は、みな独り神として、 姿は見えません。 次に地上世界が若く、水に浮かんでいる脂のようで、 以上の五柱の神は別天津神(コトアマツカミ)といいます。 |
島々の生成 |
次に成った神の名は、国之常立神(クニノトコタチノカミ)、 次に成った神の名は、宇比地邇神(ウヒジニノカミ)。次に、妹須比智邇神(スヒチニノカミ)。 以上の、国之常立神から伊耶那美神までの神々を総称して神世七代(カムヨナナヨ)といいます。 ***** 天津神達は、伊耶那岐命と伊耶那美命に「この漂っている国土を有るべき姿に整え固めなさい。」と命じ、天の沼矛(アメノヌボコ)をお授けになりました。 そこで二神は天の浮橋の上にお立ちになって、その沼矛で国土を掻きまわし、 伊耶那岐命・伊耶那美命が淤能碁呂島に降りてみると、その島には天の御柱と八尋殿(ヤヒロドノ)がありました。 二神は困ってしまって天津神に相談しますと、天津神は この八つの島がまず生まれたので、大八島国(オオヤシマノクニ)といいます。 それから御帰りになった時に、 吉備児島から両児島まで合わせて六島です。 |
神々の生成 |
さてそこで、イザナキ命が言うには、「愛しい妻の命を、たった一人の子に代えようとは思わなかった」と言って、枕もとに這い臥し、足元に這い臥して泣き悲しんだ時に、その涙から生まれた神は、香山の麓の木の本(このもと)に鎮座している、名は泣沢女(ナキサワメ)神です。 そして、亡くなったイザナミ神は、出雲国と伯伎国(ははきのくに)の境の比婆の山(ひばのやま)に葬られました。 そこでイザナキ命は、腰につけていた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜いて、その子カグツチ神の首を斬りました。 すると、その剣先についた血が、神聖な岩々に飛び散って生まれた神の名は、石拆(イハサク)の神、次に根拆(ネサク)の神、次に石筒の男(イハツツノヲ)の神です。 次に剣の根元についた血が、神聖な岩々に飛び散って生まれた神の名は、甕速日(ミカハヤヒ)の神、次に桶速日(ヒハヤヒ)の神、次に建御雷の男(タケミカヅチノヲ)神、またの名は建布都(タケフツ)の神、またの名は豊布都(トヨフツ)の神です。 次に剣の柄にたまった血が、指の間から漏れ流れて生まれた神の名は、闇淤加美(クラオカミ)の神、次に闇御津波(クラミツハ)の神である。 以上のイハサク神よりクラミツハ神までの合わせて八神は、剣によって生まれた神です。 そして殺されたカグツチ神の頭から生まれた神の名は、マサカヤマツミ神である。 次に胸から生まれた神の名は、オドヤマツミ神である。 次に腹から生まれた神の名は、オクヤマツミ神である。 次に陰部から生まれた神の名は、クラヤマツミ神である。 次に左手から生まれた神の名は、シギヤマツミ神である。 次に右手から生まれた神の名は、ハヤマツミ神である。 次に左足から生まれた神の名は、ハラヤマツミ神である。 次に右足から生まれた神の名は、トヤマツミ神である。 マサカヤマツミ神よりトヤマツミ神まで合わせて八神。 そして、斬る時に用いた太刀の名は、天の尾羽張(アメノヲハバリ)と言い、またの名を伊津の尾羽張(イツノヲハバリ)と言います。 |
黄泉国 |
イザナギの命は亡くなってしまったイザナミの命に会いたいと思い、あとを追って黄泉国(よみのくに)を訪れました。 そこで女神が御殿の閉じた戸から出て迎えた時、イザナキ命が語って言うには、 「残念なことです。もっと早く来てくださっていれば・・・。私はすでに黄泉の国の食べ物を食べてしまいました。でも、あたたがわざわざおいで下さったのだから、なんとかして還ろうと思いますので黄泉の神と相談してみましょう。その間は私の姿を見ないでくださいね」と言いました。 イザナギの命は大変待ち遠しく待ちきれなくなってしまったので、左のみづらに刺してある清らかな櫛の太い歯を一本折り取り、それに一つ火を灯して入って見てみると、愛しい妻には蛆がたかって「ころろ」と鳴り、頭には大雷が居り、胸には火雷が居り、腹には黒雷が居り、陰部には析雷が居り、左手には若雷が居り、右手には土雷が居り、左足には鳴雷が居り、右足には伏雷が居り、合わせて八種の雷神が成り出でていたのです。 このようなわけで、一日に必ず千人が死に、一日に必ず千五百人が生まれるのです。 また言うには、男神に追いついたことから、道敷(チシキ)大神と名付けたと言う。 |
身禊 |
イザナギの命は黄泉の国からお帰りになって、 この12神はお体に付けていたものを投げ捨てられて現れた神です。 次にその禍を直そうとして生まれた神の名は、 次に水底で身をすすいだ時に生まれた神の名は、 また底箇之男命・中箇之男命・上箇之男命の三神は住吉神社の神様です。 そして左目を洗った時に現れた神の名は、天照大御神(アマテラスオオミカミ) 以上十神は身体を洗ったので現れた神々です。 |
誓約(うけひ) |
そこでハヤスサノヲ命が言うには、「ならばアマテラス大御神に申し上げてから黄泉の国に参ろう」と言って天に上ろうとする時、山や川がことごとく動き、国土が全て震動しました。 さて、そこで、二神は天の安河を挟んで、誓約をする時に、アマテラス大神がまず、タケハヤスサノヲ命の佩いている十拳剣(とつかのつるぎ)を譲り受け、三段に打ち折り、玉の緒を揺り鳴らしながら天の真名井(まない)の水で振りすすいで、噛みに噛んで砕き吹き出した息の霧から生まれた神の名は、多紀理媛(タキリビメ)の命、またの名は奥津島比売(オキツシマヒメ)命です。 |
天岩戸(あまのいわと) |
そこで、ハヤスサノヲ命が、アマテラス大神に言うには、「私の心が清らかだったので、私の生んだ子は媛御子でした。これによっていえば当然私の勝ちです」と言い、勝った勢いのままアマテラス大神の耕す田の畔を壊し、その溝を埋め、また、新穀を召し上がる御殿に屎を撒き散らした。 そのため、高天原はまっ暗くなり葦原中国もこことごとく闇くなりました。 次に天の安河の川上にある天の堅い岩を取って来、天の金山の鉄を採り、鍛冶師の天津麻羅(アマツマラ)を探し、伊斯許理度売(イシコリドメ)命に命じて鏡を作らせて、王の祖(タマノオヤ)命に命じて八尺の勾玉の五百箇の御統の珠を作らせ、天の児屋(アメノコヤネ)命と布刀玉(フトダマ)命を呼んで、天の香山の雄鹿の肩の骨を抜き取り、天の香山の波々迦(ははか)の木を取って骨を焼いて占いをさせました。 天の香山のよく繁っている賢木(さかき)を根ごと掘り起こして、上の枝に八尺の勾玉の五百箇のみすまるの珠を取り付け、中の枝に八咫鏡(やたのかがみ)を取りかけ、下の枝に白和幣(しらにきて)・青和幣(あをにきて)を垂れかけ、この種々の品は、フトダマ命が太御幣(ふとみてぐら)として奉げ持ち、アマノコヤネ命が神聖な祝詞を唱えて、天の手力男(アメノタヂカラヲ)神が脇に隠れて立ち、天の宇受売(アメノウズメ)命が天の香山の天の日影を襷(たすき)にかけ、真拆の蔓をカツラにして、天の香山の笹の葉を束ねて手に持ち、アマテラス大神がお隠れになった天の石屋戸にの前に桶を伏せて踏み鳴らし、神憑りをして、胸乳をさらけ出し、裳の紐を陰部までおし下げたので、タカアマノハラが鳴り響き、八百万の神が一斉に笑ったのです。
そこでアメノウズメが言うには、「あなた様にも勝って貴い神がいらっしゃるので、喜び笑って踊っています」と答えた。 |
閑話休題・・・蚕と穀物の種 |
ハヤスサノヲ命は食物を大気都比売(オホゲツヒメ)の神に求めたことがあります。 そこでオホゲツヒメは、鼻や口、また尻から様々な美味な食物を取り出して、色々に調理して差しあげた時、ハヤスサノヲ命はその様子を覗いて見ていました。スサノヲ命は汚いことをして食べさせると怒り、すぐにそのオホゲツヒメ神を殺してしまいました。 |
八俣の大蛇 |
こうして追放されて出雲国の肥河(ひのかわ)の川上の鳥髪(とりかみ)という所に降り立ちました。 この時、箸がその川から流れ下りてきたのです。 そこでハヤスサノヲ命は、人が川上にいると思い尋ね上って行ってみると、老夫と老女の二人がいて、童女(をとめ)を中に置いて泣いていました。 そこで、そのクシナダヒメと夫婦の交わりをして生んだ神の名は、八島士奴美(ヤシマジヌミ)神と言う。
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大国主の神 |
さて、このオホクニヌシ神の兄弟には八十神がいた。しかし皆、国をオホクニヌシ神にお譲りになった。譲った理由は次の通りである。 そこで、教えの通りにすると、その身は元通りになったのです。これが稲羽の素兎である。 そこで、その兎がオホナムヂ神に言うには、「あの八十神は、きっとヤガミヒメを得ることはできないでしょう。袋を背負ってはいても、あなたが得ることでしょう」と申し上げた。 そこでヤガミヒメが、八十神に答えて言うには、「私はあなたたちの言うことは聞きません。オホナムヂ神に嫁ぎます」と言った。そこで八十神は怒って、オホナムヂ神を殺そうと思い、皆で相談して、伯岐国の手間の山の麓に来て言うには、「この山に赤い猪がいる。そこで、我々が一斉に追い下ろすので、お前は待ち受けて捕えよ。もし待ち受けて捕えなければ、必ずお前を殺すだろう」と言って、火で猪に似た大石を焼いて転がし落としました。 このヤチホコ神が、高志国の沼河比売(ヌナカワヒメ)を娶ろうとして出かけた時、そのヌナカワヒメの家に着いて、詠んだ歌は、 また、その神の本妻のスセリビメ命が、とても嫉妬してしまったので、その夫の神は当惑して、出雲から倭国に上ろうとして身支度をして発とうとする時に、片手を馬の鞍にかけ、片足を鐙(あぶみ)に踏み入れて、詠んだ歌は、 これを神語(かむがたり)といいます。
さて、羽山戸の神がオオゲツヒメの神と結婚して生んだのは若山咋(ワカヤマクヒ)の神、次に若年の神、女神の若沙那売(ワカサナメ)の神、次に弥豆麻岐(ミズマキ)神、次に夏の高津日(ナツタカツヒ)神、またの名は夏の売(ナツノメ)の神、次に秋比売(アキビメ)の神、次に久久年(ククト)神、次に久久紀若室葛根(ククキワカムロツナネ)神。以上若山咋の神から若室葛根の神まで八神です。
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国譲り |
アマテラス大御神は命令によって、「豊葦原の千秋長五百秋の水穂国は、私の子の正勝吾勝勝速日天の忍穂耳(マサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ)の命が治めるべき国である」とし、天降りさせました。 そこでアマテラス大御神が「今度はどの神を遣わすのがよいだろうか」と尋ねた。
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天孫降臨 |
アマテラス大御神とタカギ神の命令によって、太子(ひつぎのみこ)であるマサカツアカツカチハヤヒアメノオシホミミ命に言うには、「今、葦原中国を平定し終えたと言ってきたので、委任した通りに、降って治めなさい」と言った。 木の花佐久夜比売 アマツヒコヒコホノニニギ命は、笠沙の御前で美しい少女に会った。 このようなわけで、今に至るまで天皇方の御寿命は長くないのです。 日子穂穂出見命
豊玉比売 さて、海神の娘のトヨタマビメ命が、自らやって来て言うには、「私はすでに身篭っており、今産む時期になりました。これを思うに、天つ神の御子は海原に生むべきではありません。そこで、やって来ました」と言った。 |
古事記現代語訳―了