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マヤ族の神話

万物創造
初め、この世には何にもなくって、ただ フラカン、グクマツ、シュピヤコシュ、シュムカネという神様だけが居た。

神々は「大地を最初にこしらえねば、何にも出来ねぇべよ?」と相談し合い、「大地よ出でよぉ〜」と叫ぶと大地が現れた。

調子こいた神々は動物をこしらえ、植物をこしらえ、木を切り刻んで人間をこしらえた。

ところが、この人間ってのが酷ぇやつらの上、神々に対しても馬鹿にしやがるので、怒髪天の神々は「滅ぼしてやんべぇ」とばかりに大洪水をおみまいしたんだった。

それまで人間に虐げられていた家畜や動物たちまも、逃げ惑う人間に噛み付き蹴飛ばし散々いたぶった。

しかも臼とか茶碗とか皿、家の屋根までも人間を虐めまくり、とうとう人間は滅んでしまった。
人間創造
さて、フラカン神たちはもう一度人間を作り直すことにした。

最初、黄色と白のトウモロコシの粉から4人の男をつくった。バラム・キツェ(美歯の虎)、バラム・アカブ(夜の虎)、マハクター(著しい名)、イキ・バラム(月の虎)と言う。

この4人は心根も姿かたちも神々と完璧に同じだったのでフラカン神らは「ワシらの作り物がワシらと同等なのは」気に食わなかったので、もちっと不完全なのに変えることにした。

フラカン神は4人の男の目に息を吹きかけると、男たちの目は大地の一部しか見ることが出来なくなった。

満足した神々は男達を眠らせているうちに、男達の妻になる女たち カハ・パルマ(落ちる水)、チョイマ(美しい水)、ツヌニハ(水の家)、カキシャ(輝く水)をこしらえた。

この8人が人間の祖先となった。
火の起源
人間たちは火を知らなかっただもんで、寒いわ暗いわ、肉は生だわで せづねがっただど。

それを見でだトヒルっつう神っちが 

「まず、むずせぇべした」ってんで やおら両脚をこすりはじめたんだど。

そしたら、股から ムラムラと・・・じゃなく、メラメラと炎が燃え立ち、人間たちはその火を有り難く頂いたんど。

人間たちはその火を大事にしてたげんども、大雨が降って消えっつまぁど、

「まず、むずせなぁ・・・」っつってまたトヒル神が股スリスリしてくっちゃだど。
太陽の出現
太陽が無ぐって、真っ暗闇っつうのは人間はおっかながんべした?

なじょすんべと思案した八人の人間は天を見上げて「明るくしてくんにがま〜」っつって祈ったんだげんじょも、なかなか灯りはつかながっただど。
 しょうがねぇがら、トゥラン・スイパっつうどごさ行ってみだげんじょも、やっぱ灯りは無がった。

そのうちになんだか 互いの言葉が通じなぐなっつまって人間は右往左往して また トヒル神に「なじょかしてくんにがま?」と祈っただど。

トヒル神は高けぇ山を越えで、海の方さ行ってみっせっつったので 人間たちはそうしたんだど。

でっけぇ海だもんだがら 舟もねぇし 途方にくれでっと、おめ、こりゃどうしたもんか、海の水がさぁぁっと二つに分がっち道ができたんだど!

人間たちは道を歩いで、トヒル神が示したどごで待ってだら、東の方から太陽が昇ってきたべした!

この太陽は今みでに強くながったげんじょも人間もケモノたちも皆喜んだぁ。

そうしてこの八人の人間はハカビツ山の麓にキチェ族の町をつくって棲んだげんじょも、だんだん人の数が増えてきてあちこちに色んな部族の村もできたんだど。
そうしてしばらくすっと、あの八人も年寄りになってきたどき、神様たちがやってきてこう言っただど。

「おめだちの子めらが栄えるためには ワシらに人間を犠牲の捧げ物にすんなんねっ」

あら、やんだおら〜なじょすんべ・・・・

八人は自分たちの最初の仲間キチェ族を殺すわけにはいがねがったがらよぉ、他の部族から犠牲を出すべぇっつって戦ったんだど。

キチェ族はそうやって他の部族を従えるようになったころ、八人のうちの4人の男はついに臨終しただど。

四人が臨終の別れの言葉を言うと 姿はたちまち見えなくなって、そのあとに大きな巻束が現れたんだど。

キチェ族はその巻束を「包まれた巌の宝」っつって、絶対開けて見なかっただど。
冥府からの挑戦
シュピヤコシュ神とシュムカネ神の間にフンフン・アプとブクブ・フナプという二人の男の子が生まれた。

フンフン・アプはシュバキヤロ女神と結婚してフンバツとフンチョウエンという二人の子をもうけた。

さて、この二人、トラチトリという球遊び(ゲートボールみたいなもん)が好きで飛び回っているうちに、熱中するあまりシュシバルバ(死の世界・冥府)の近くまで来てしまった。

冥府の支配者フン・カメとブクブ・カメがそれを見つけて二人を捕まえようと思ったので、

「おい、そこの小童、球遊びで賭けをすんべ」と声をかけた。

「おお、やんべ!」ときかん坊の二人は応じた。

二人は案内の梟のあとをついて下界へ向かった。血の川を渡り死人の世界へ入り込むと、大きな館の前に出た。館の入り口にはおっかねぇ顔をした二人の男が立っていたので、

(ははぁ・・・首領の二人が出迎えてるな?)と、礼儀をつくしてお辞儀をしたが、それはただの人形だった。
フン・カメとブクブ・カメは館の中から大笑いした。

二人の子供は頭にきたが我慢していた。

フン・カメとブクブ・カメは
「いやいや、ちょっとしたジョークだべぇ。ま、そこさ座れや」と言ったので、二人がすわると それは真っ赤に焼いた石だったので二人はウギャァとばかりに飛び上がった。

冥府のものどもは手を叩いて喜んだ。

二人は「にしゃだぢ、よぐもやっでくっちゃなっ!許さねぞぉ!」と怒ったが、冥府のものどもが一斉に飛び掛って、二人を捕まえ殺してしまった。

フンフン・アプの頭は切り取られ、瓢箪の木に吊るし、冥府の支配者は「今後一切、この木の実を食っちゃなんねぇぞ」と言いつけた。

◇◇◇

さて、冥府の国の貴人クチュマキクの娘シュキクが、ある日この木の下を通りかかると、
「あら、なんだって でっけぇ実だごど。旨そうだべした〜」と1つの瓢箪の実に手を伸ばすと、フンフン・アプの頭が彼女の手にツバを吐きかけ、『おめは そのうち 母親になんべ』と言った。

「そんな、なじょすんべ。オラ殺されっつまぁべした」と泣くので頭は『だいじょぶだぁ』と慰めた。

しばらくすると娘の異変に気付いたクチュマキクは梟たちを呼びつけて娘を殺すように命じた。

シュキクは父の企みに気付いて、梟たちに「止めでくんつぇ、お礼に何でもくれっから」と哀願すると、梟たちは娘の心臓の替わりに羊蹄草の真っ赤な汁が固まったものを壺に入れてクチュマキクの元へ帰った。

◇◇◇

冥府にいられなくなったシュキクはフンフン・アプの母親シュムカネを訪ねて それまでの経緯を話したが、母親は信じられなかったので証拠を求めた。

『おめの云う事が本当なら、トウモロコシの生えて無ぇどごで、トウモロコシをいっぺぇ採ってきてみっせ』

「そんなごど、簡単だおら」シュキクはトウモロコシの生えていない野原の大地を叩くと実をたくさんつけたトウモロコシが生えた。

それを見たシュムカネは

『間違い無ぇな・・・息子は冥府にいるんだな。おめの腹の子はオラの孫だべな』

しばらくすると、シュキクは双子の男の子を産み、フン・アプとシュバランケと名付けられた。
人猿の起源
双生児のフン・アプとシュバランケは大きくなるにつれ悪戯者になり、祖母のシュムカネ女神を困らせていた。
女神は堪り兼ねて二人を追い出したのだが、双子はそれをよいlことに山野で気ままに暮らすようになり、誰に教わったわけでもないのに吹き矢が巧みになった。
双子の腹違いの兄たち、フンバツとフンチョウエンは、二人が巧みな狩人になったのが妬ましかった。
『舎弟だちはよ、ごせやげんぞな。オラだちがまったぐ獲物捕んにどぎも、いっぺぇ捕っからよ』
兄たちはこう言っては双子の狩りに邪魔をするので、双子の弟達はとうとう腹を立てて兄たちを醜い猿に変えてしまった。

祖母のシュムカネ女神は可愛い兄孫たちが猿に変ったのを嘆き、双子を呼んで兄たちを元に戻すように頼んだ。

「ん・・・ばんちゃの頼みなら、しょうがね。げんじょも、一つ、条件があんべ。猿がどんな おもしぇごどしても 絶対 笑っちゃだめだべ?ばんちゃ、出来っかよ?」

女神は承知した。

双子は猿の元へ行くと、こう言った。

「あんちゃだぢ、元に戻っちならよ、ばんちゃを笑わしてみだら なじょだべ?」

猿達は女神の前にいくと 一生懸命 可笑しな振る舞いをして見せた。

女神は必死で堪えていたが、遂に大笑いしてしまった。

「ばんちゃ、残念だったべ。約束だもなぁ、あんちゃだちはこのまま猿だべなぁ」

こうして世の中に人猿が出来た。

双生児の冥府攻め
双生児のフン・アプとシュバランケは魔法の道具を持っていた。
それは独りでにトウモロコシの畑を耕したり、種を蒔いたり、収穫してくれる道具だったので、双子はそれを良いことに狩りをして遊んでいた。
それをみていた野獣どもは、折角耕した畑に木の根や石っころを投げ入れて邪魔をした。
「邪魔してんのは 誰だべ?」と双子は畑のそばに大きな罠をかけておくと、兎と鹿がかかったが、彼等は尾を切って逃げたので兎と鹿の尻尾は短くなった。
鼠も罠にかかったが逃げ出せなかったので双子に捕まった。
「おめが?悪さしてだのは!ぶっつぶしてやんべ」と双子神が言うと、
鼠は『許してくなんしょ。その代わり おめさまだちにとって大切なごと教えてやっから』と言った。
鼠は双子の父フンフン・アプ神が冥府の首領に拉致されて殺されたことを話した。
双子はたいそう怒って、「酷でごとする奴等だべ!許さんに。やっつげでやんなんね」と叫んだ。

さて、耳さとい冥府の首領フン・カメとブクブ・カメはそれを聞きつけた。
『面しぇごどになったぞ。また球蹴りにかこつけて双子を殺してやっか』と考えたので、祖母シュムカネ女神に『あんたの孫の双子とトラチトリの勝負をしたい。つきましては冥府までおいでください。よもや、びびって逃げはしませんでしょうな』と言う使いを出した。
女神は驚いて双子に急いで知らせようと蚤に言付けをしたが、蚤は歩みが遅かったので蝦蟇に呑み込ませた。しかし、蝦蟇の歩みも遅かったので蛇に呑み込ませた。蛇もチンタラ這いつくばって遅かったのでボクという鳥に飲み込ませた。

双子のもとに矢のように飛んで行ったボクは蛇を吐き出し、蛇は蝦蟇を吐き出し、蝦蟇は蚤を吐き出すと、蚤は冥府首領からの伝言を伝えた。
双子神は父を殺した首領を滅ぼすチャンスと思った。
双子は祖母に「オラだぢ、とぉちゃんの仇打ちしてくっからよ、このトウモロコシを見ててくんつぇ。オラだぢにもしものことがあったら、これ、枯れっつまぁげんじょな」そう言って、二人は父や叔父の通った道を歩いて行った。

双子は父たちの過ちを繰り返さないようにシャンという動物を先見にした。
シャンはフン・アプの脛毛で冥府の者たちを刺しながら進んだので、冥府首領の人形を見誤ることは無かった。
そして真っ赤な焼け石や、父たちが放り込まれた暗の家も避けられた。
そして冥府の首領たちとトラチトリをして手ひどく打ち負かしてやった。
さて負けた首領たちは怒ってさらに難題を吹っかけた。
『ワシらの花園から4つの花束を採ってこれっか?』首領たちは花園の番人に双子が来たら殺せと命令しておいたが、双子神は自分たちでは取りに行かず、たくさんの蟻に花盗みを頼んだので まんまと花束を手に入れた。
次に首領たちは、たくさんの悪魔がやってくるものを槍で刺しまくる「槍の家」に双子を放り込んだが、双子は悪魔を言葉たくみに説き伏せて槍の穂先から逃れた。
続いて「寒気の家」「虎の家」「火の家」に押し込められたが、そのたびに逃れた。
しかし、「蝙蝠の家」に入れられると、真っ暗闇のなかから音もなく蝙蝠が飛んできて剣のように鋭い爪でフン・アプの頭が切り落とされてしまったが、通りかかった亀がフン・アプの体に触れると頭に変じて首と繋がったので、フン・アプはすっくと立ち上がった。

冥府の首領たちは どんなことをしても双子神が死なないのであきれ返っていると、双子神は遂に父と叔父の仇を討つときが来たと思った。

双生児神は二人の魔術師を呼んで 自分たちを火葬にさせた。
魔術師たちは双子神の骨を粉々にして河に投げ込むと、それは5日後に魚になった。そして6日経つとまた神の姿に戻ったのだった。
「どうだ?オラだぢには こういう不思議な力があんだ。おめだぢなんでも言ってみろ、生き返らせてやんべ」双子はそういうと、冥府の者たちのご要望にお応えして、宮殿を焼いては元にもどし、犬を殺しては生き返らせ、人間を切り刻んでは元に戻してみせた。
さて、冥府の首領、フン・カメとブクブ・カメは
『ほほぅ・・・いったい死んずまうっつうのは どんな感じになんだべな?やってみっちがもしんにな。いっちょ、ワシらにもやってくんにがま?んでも、ちゃんと生き返らせてくんにど困っけんじょもよ』と頼んだ。
しかし、双子は殺しっぱなしにしてしまった。

冥府の者どもは首領を失い、驚き騒いだが、双子神は彼等を呼んでこう言った。

「おめらの首領はオラだぢのとうちゃんと おんつぁまを騙まし討ちしたがら自業自得っつうもんだべ。おめらもそれに乗っかかって悪さしたがら同じだべや。だいたいトラチトリっつうのは身分の良い者しかしちゃなんね遊びだぞ。にしゃだぢはやらんに遊びだ。死んだ人間の支配もだめだがらな。にしゃめらは森のケモノだけと遊んでろ」

双子神は父と叔父の体を暗い死の世界から運び出して、天界に持って行って 太陽と月にした。

巨魔と贋医者
昔、大洪水から大地が乾かないころ、ブクブ・カキシュという怪物がすんでいた。
体中が黄金と白金に輝き、歯は全部エメラルドだった。
ブクブ・カキシュは傲慢で神々を嫌っていた。ブクブ・カキシュにはシパクナとカブラカンという二人の男の子がいたが、息子たちも親に劣らず傲慢で隙あらば神々を叩き潰してやると言っていた。

神々はそれを知り、双生児神を呼んで この親子を退治するように言った。

ブクブ・カキシュは香の高い黄色の実がたくさんなっている不思議な果樹を一本持っていた。
ある朝ブクブ・カキシュが朝食に実を食べに行くと、見知らぬ二人の男が実を全部食べてしまっていたのでエメラルドの眼をギラギラさせながら『にしゃめら!誰に断って食った!許さねぞっ!』と怒鳴った。
二人の男は双生児神だった。
フン・アプが手に持っていた吹き矢をふっと吹くと、毒の塗ってある矢がブクブ・カキシュの口にぐっさりと刺さった。
フン・アプは怪物に組み付いて行ったが、大暴れした怪物に腕をもぎ取られてしまった。ブクブ・カキシュは傷の痛さを堪えて家に戻ると、妻のチマルマトが驚いて尋ねた。
ブクブ・カキシュは経緯を話すと、もぎ取ったフン・アプの腕を渡し、『敵の腕だべ。仕返しに火の上に吊るして置げ』と言った。

さて、腕を切られたフン・アプは流石に痛くてシュバランケに「やっぱ 痛ぇ。なんとかしねぇど怪物退治も出来ねぇべよ」と言った。
シュバランケも「んだな、なじょすんべな」と考えた。
双子はシュピヤコシュとシュムカネに頼むことにした。「とりあえず、傷の手当てはしたげんじょ、腕を取り返さないと なじょもなんねべ」と言われた。
フン・アプは「んだげんじょもよ、ばんちゃ。ブクブ・カキシュはおっかね巨魔だがらよ、うっかりすっとまた腕取られっつまうべな」としょげた。
祖父神と祖母神は「しょうがねな。んじゃ まんずは腕を取り返しに行ぐべか」と言って、医者に化けることにした。

ブクブ・カキシュの家からは恐ろしい吼え声がしていた。
「吹き矢の毒がまわって苦しんでんだべな。よっしゃ、良がんべ」そう言うと医者に化けた四人はブクブ・カキシュの家に乗り込んだ。

「なじょしらったのし?いんや、外まで苦しそうな声がしてるもんで、医者としては 放っておげねど思って来たのし。」
それを聞くとブクブ・カキシュは喜んで
『いいどごさ来てくなんしたげんじょも、お二人の後ろにいる若げもんは何だべか?』
「ああ、それはオラだぢの息子で、修行中なんだがらし」とシュピヤコシュとシュムカネが答えた。
『そうがよ、おめさまだぢ、ワシの傷、治せんのがま?』
「やんだおら。オラだぢに治せ無ぇ傷なんて無ぇだがら」
『んだげんじょも、おめさまの息子の一人は片腕無ぇべした?』
「ああ、これがよ?これは片腕でも傷や病を治せるっつう修行なんだ」
『ふうん、そんなもんなんだべか』
「したげんじょも、なんでおめさま、そんな口の端っこ、怪我したんだよ?」
『悪魔がよ、毒矢でな。うまく治してくっちゃら、いっぺぇ褒美くれっからやってくんつぇ』

シュピヤコシュとシュムカネはブクブ・カキシュの傍に寄り、もったいぶった仕草で傷を診てから「こりゃ、おめさま、大変だべ。毒が回ってしまって、歯も目玉も摘出すんなんねなし」と怪物を脅かした。
ブクブ・カキシュは『なんだって?!目玉も歯も抜くっつうのが?駄目だ。そんなごどしたら、ワシは見え無ぐなっつまうし、食えなくなっつまうべよ』と叫んだ。
「いやいや、安心しっせ。替わりの目と歯を入れてやっがら。任せっせ」

シュピヤコシュとシュムカネは手早く巨魔の口からエメラルドの歯を全部抜き取り、2つの目玉をくり抜くと、替りにトウモロコシの粒をぎゅうぎゅうに詰め込むと、さすがの巨魔も一声吼えて息が絶えた。

フン・アプは惚けている巨魔の妻を押しのけて、火の上の自分の腕を掴むとシュピヤコシュとシュムカネの魔法で元にもどしてもらった。、

シパクナ退治
さて、巨魔のブクブ・カキシュは退治されたが、まだ二人の息子が残っていた。
双生児神はまず毎日山の上に山を積み重ねているシパクナを退治することにした。
双生児神は400人の若者を使い、一軒の家を建てる風を装った。
シパクナがいつも通る森の中で大きな樹を切り倒した若者たちが、1本の樹をもてあましているのを見たシパクナは『なにやってんだ、にしゃだぢ」と大笑いした。
「家の屋根にすっかと思って切り倒したのはいいげんじょ、持ってぐよねぐなっつまって、困ってんだがらし」と若者が言うと、
『ふふん、いづまでもグチャグチャやっでられっど、邪魔でしょうがねぇがら、俺がやっでやんべ』と言うとシパクナは大きな樹を担ぎ上げた。
「いんやぁ、すんげぇ力だべぇ。んじゃ、こっちさ運んでくなんしょ」と若者達は先に立って歩き出した。
「まんず、すまねがったなし。この穴が家の土台になんだ。悪ぃげんじょ、穴の中さ運んでもらわんにがま?」と言ったので、シパクナは謀られるとは思わずに穴の中に入った。
若者達は巧く行ったと思い込み、シパクナ目掛けて大きな石を雨のように落としたが、シパクナは穴の凹みを見つけて隠れた。
そして動き回っていた蟻に自分の毛を渡した。
蟻たちが毛を引っ張ってくるのを見た若者達はシパクナが死んだと思い、石でいっぱいになった穴を土台にして家を建て祝杯をあげた。
シパクナは穴の隅にうずくまって隙をうかがっていたが、満身の力を込めて立ち上がると、家も土台も空高く跳ね上がった。
家の中にいた若者達はそのまま天界まで飛ばされ、星になってしまった。
七曜星と呼ばれる星の群れは、飛ばされた若者達で、彼等はいつか大地に戻れる日を待っている。

双生児神は企てが失敗したのを見て「若ものだぢには気の毒したな。やっぱオラだぢでなんとかすんべ」と、シパクナの様子を覗っていた。
シパクナはあいかわらず山の上に山を重ね、河で魚や蟹を獲って食っていたので、双生児は大きな蟹を一匹こしらえて谷底の洞穴に隠しておいた。
そして二人はシパクナに「何してんだよ?」と声をかけると巨人は『獲物を探してんだ』と応えた。
「おめさまは何喰うのがよ?」
『俺?魚とか蟹が好物だな』
すると二人は「オラだぢがここに来る途中で、谷底の洞穴ん中に、でっけぇ蟹を見たげんじょ」と言うと、シパクナは「そうが。んじゃすぐ獲りさ行ぐが」と谷底に飛び降りた。
双生児神はシパクナが穴を覗いているのを見ると、急いで大きな山を谷に転がり落とした。
山の下敷きになったシパクナは身をもがいて這い出してきたが、双生児神はシパクナを大きな石に変えてしまった。

こうしてベラ・パスに近いメアワン山の麓でシパクナは滅びた。

カブラカン退治
双生児はカブラカンのところに行った。
カブラカンは大きな山を根こそぎ引っこ抜き、大空に投げ上げていた。
「よっ、カブラカンさんよ、おめさまは何やってんだ?」
『にしゃだぢ、目付いで無ぇのが?いったい誰だ?』
「オラだぢに名前なんか無ぇよ。ただの狩人だ」
『ふん、狩人?何しに来た?』
「吹き矢で鳥を獲りに来たんだべ。それにしても、おめさまはすげぇな。もちっと見っちがら山投げしてくんにがよ」
それを聞くとカブラカンは得意になって『しょうがねぇな。見せでやっがら、にしゃだぢ、好きな山ゆってみろ。どんなのでも投げでみせっから』
「んじゃ、その前になんか食わねが?オラが獲ってやっからよ」そう言うとフン・アプが吹き矢で大きな鳥を落とした。
巨人が生で食おうとしたので「生よりは焼いで喰うと もっと美味ぇぐなんぞ」とフン・アプは2本の木の棒をこすって火をつくると、焚き火にし、その上に鳥を吊るして焼いた。
『ほんとだ、美味ぇな』カブラカンは貪り喰った。
それを見るとフン・アプはにやりと笑い、「そんじゃ、巨人のだんな、あそこのでっけぇ山を投げてみせろ」
『よがんべ』
カブラカンは立ち上がると『ん?なんか変だぞ。にしゃの言う山が見えねべ』
「なに言ってんだ、あそこにあんべよ」
『いや、それに力が入らねぇ・・・・』カブラカンは歯を食いしばりなんとか精気を取り戻そうとしたが駄目だった。
巨人は大きな呻き声を発てると、そのままどうっと大地に倒れ息絶えた。
卵から生まれた小人
あるところに老婆が独りで住んでいた。
老婆は子供がいないのを寂しがって、ある日卵を一つ木綿の布でくるんで『こうして置いたら卵の中から子供が生まれるかもしんにな』と独り言を言った。
毎日じっと卵の孵るのを待っていたが、なかなか生まれなかったので、老婆は深い溜息をついた。
しかし、ついに卵が割れて中から小さな子供が出てきた。
老婆はたいそう喜んで大事に育てた。子供は大人と同じように歩いたり喋ったりするようになったが、小人のままだった。
老婆はちっとも苦にならず、『おめぇはいつか大王になる』と言っていた。

ある日老婆は小人にむかって『おめは王様んどごさ行って、力比べしてこなねばなんね』と言った。
小人は嫌がったが、老婆は『早ぐ行げ』と言うばかりだったので、小人はしぶしぶ出かけた。
王宮の前では門番が小人を追い払おうとしたが、小人は必死に頼み込むので門番は根負けして王様に伝えると、王様は面白がって『連れてこい』と言った。

『力比べをしっちのが?んじゃ、その石を持ち上げてみろ』と王様に言われたが、小人はとても出来そうになかったので老婆の元に逃げ帰った。
老婆は『やってみねばわがんねべ!王様に出来るごど、おめが出来ねぇわげ無ぇ。もいっかい行ってこ』小人はもう一度王宮へ行き、石に手をかけると軽々と持ち上げた。身体に似合わない強力に王様は驚いて、色んな力技をさせてみたが、小人は楽々とこなした。

王様はとうとう怒り出し、『この町にあるどんなでかい家よりもでっけぇ宮殿を建てろ。出来ねがったら、殺す』と言った。
小人は驚いて老婆のもとに逃げ帰ると、老婆は『なんだ、そんなことが。安心して寝でろ』と言う。
小人は気になってしょうがなかったが、朝起きてみると自分と老婆はどの家よりも大きな宮殿の寝室にいた。
王様はますます怒って、『コゴヨル(硬い木)を二束もって来い。まんずワシがその1本でにしゃの頭を殴るから、次はワシの頭を殴れ』小人はこれを聞くと驚いて老婆のもとに逃げ帰ると、『なんだ、そんなことが。安心しろ』と言って息子の小人の頭に“トルティヤ”というものを載せた。

小人がコゴヨルの木を2束持って来ると、王様は1束を取ると、小人の頭を思いっきり殴りつけたが、小人は平気だった。
いくら殴ってもびくともせず、ついにコゴヨルの束が粉みじんになってしまった。
小人は自分の番だったのでコゴヨルの束で王様を殴ると、ただの二撃で頭を叩き砕いてしまった。

人々は身体は小さいが すばらしい力持ちの小人を自分たちの王様にした。
小人が王様になると同時に老婆はかき消すようにいなくなった。

マニという村にたいへん深い井戸があって、地下に続いている。
この地下に流れている河の岸辺に一本の大きな木があって、その木の下に独りの老女が立っている。彼女は蛇を自分の傍に置いていたが、それは人間の赤子を餌にして命を保つと言われている。

乙女争い
チチェンという地にカネクという王様がいた。
王は麗しい乙女に恋をして結婚を申し込んだが、乙女はすげなく断って、ユカタンに住む恋人の若者と結婚することになった。
カネク王はフラれた腹いせに『こんなに想っているワシの真心を踏みにじった娘が憎い。この上は相手の男もろとも殺してやる』と、たくさんの家来を引き連れて婚礼の席に攻め入った。
戦いの混乱に乗じて王は、うろたえていた乙女を捕まえると姿を消した。

花嫁を奪われた若者はあちらこちらを探し回った。
若者の勇気に怖気づいたカネク王は家来を連れて、住み慣れたチチェンから逃げ出した。

マヤ族の神話―了