続 古事記幻想

ヤムマト創世5089共通年次、
首長国ヤムマトは恒星ナギを母星とする各惑星国家間と連邦を構築し、さらなる宇宙連合国拡大のため朋友を求める方針をかため、
マザーコンピューターアマテラス並びにAIツクヨミの庇護の下、盟主ニニギの統率をもって宇宙の海へ乗り出した。




≪探査船トヨウケ統合制御システムオモイカネよりキャプテンニニギへ報告―探査船トヨウケ直進方向座標軸上位24.38度下位67.04度前位13,56後位92.10度の惑星に生命の存在を確認。オモイカネ端末ウズメ投下許可願います≫
「いいよぉ、降ろしておいて。あ、そうだ、ヤムマトのお留守番クンにも伝えてよ」
≪承知いたしました。しかしニニギ・・・いつも思うんだけど、その「お留守番クン」ってのは拙いんでないの?そのまま送電するのですか?≫
「いいのいいの、ホアカリは僕の分身AIだしさ、だいたいツクヨミだってAIだよ。ヤムマトはヤムマト人の手で総括すべきなんっつってるけど、ヤムマト人はヒトだからね、不死のAIには敵わないだろう?結局いまだにヤムマトはマザコン・アマテラスと始祖AIアシカビの分身ツクヨミの支配下だよ。」
≪ニニギはヒトですが、ヤムマト人とイヅモ人の血を受け継いで ご長命でいらっしゃる・・・≫
「ふん・・・そんな“ご長命”が何の役に立つ?ヤムマト人は一瞬たりともマザコンの御手を離れられなくなっているじゃないか。ヤムマト人にとってマザコン無しで生きていけると思うか、オモイカネ?」
≪ニニギはどうなさりたいのですか?≫
「決まってるだろ!」
≪・・・・・≫
「今の会話、全部送っていいからね」
≪承知いたしました。≫




◆探査船トヨウケ統合制御システムオモイカネよりヤムマトマザーアマテラスへ通信◆

キャプテンニニギ以下探査班5名が惑星タカチホに降下。
しかし先住民と接触の第一報後、ニニギとの連絡不可。
意図的に端末ウズメ以下の接続を断ったと思われます。




「きれいだなぁ・・・この夕日見ろよ、ヤムマトなんかよりずっと壮大な光じゃないか?オオトモ、クメ」

「ニニギさま、端末ウズメの接続をOFFしたのは何故ですか?」
「ん?オオトモ、なんか言ったか?」
「オオトモ、ニニギ様の深慮に口を挟むでない」
「ははは、クメ、お前は変わらんな。コールドスリープ中にその堅い脳味噌をいじくってやろうかと思ったが、オモイカネに止められたんだぜ」
「盟主ニニギ様にお使えもうしあげるのが我等5名の務めでありますゆえ、わが脳味噌ひとつ、いつなりと差し上げます所存!」
「あ〜〜そうか、そうだったな、クメ(爆)。クメの忠誠心は良く知ってるさ」
「ははっ!」
「オオトモ、お前、タカチホの住人をどう思う?」
「そうですな、まこと我等ヤムマト人と姿形が良く似ておりまするかと・・・」
「だろ?さっきから僕のヤサカニ玉(スサエネルギー小型感応装置)がワンワン言ってるんだ」
「そ、それは・・・!」
「うん。惑星タカチホもスサエネルギーで創世されたものだってことだぜ。いわば、イヅモの異母兄弟ってとこだな」
「ニニギさま、しかしオモイカネはそのことを?」
「知ってたはずだがね。なのにあいつ、何も言ってなかった。」
「どういうことでしょうか?」
「ふん、さぁね。オオトモ、端末ウズメの接続を切ったのはそういうわけ」
「はっ」
「さて。これで我等は晴れてマザコンから脱却の身だ。行くぞオオトモ、クメ!」
「ははっ!!」



◆探査船トヨウケ統合制御システムオモイカネよりヤムマトマザーアマテラスへ通信◆

惑星タカチホからの強力なスサエネルギー探知。
探査船トヨウケはスサエネルギー防御システム稼動。
キャプテンニニギの端末ウズメ切断処置は依然続行中。
交信不可。
クサナギ発動の形跡未だ無し。







「美しい・・・・」
「今度はなんです?もしもし?ニニギさま?・・・ちょっと、聞いてます?」
「僕はあなたに逢う為にここに引き寄せられたのかもしれない」
「ニニギ様の予知能力はヤムマト随一でございますからなぁ」
「ぜひお名前をお教え願いたい」
「もしもぉし、ニニギさまぁぁ?タヂカラオ陸上探査巨大重機ロボットのコクピット内でナンパしても彼女は怯えるだけですよぉ」
「うっるせぇな、オオトモっ、さっきからごちゃごちゃと!わかってるよっ」
「ニニギ様のテレパシー力もヤムマト随一ですからなぁ」
「お前もウルサイ、クメ、だまってろっ!」
「はっ・・・・」
「え?サクヤさんですか、美しいお名前ですなぁ。僕はニニギと申します。は、あなたに一目惚れです、はい。あ、僕らは星の海を渡って参りまして、ヤムマトって星なんですが、ええ。そうですね・・・残念ながらここからは望めませんが、ちょうど頭上に浮かんでいるキラキラしいのがその宇宙船でして、はい。ははは・・・・」
「・・・・ははは、ですって。ニニギさまがこんなニヤけた顔するのって、トヨウケに乗船が決まって以来ですよね」
「オオトモ、ニニギ様の通話の邪魔するでないぞ」
「え?そうですかぁ・・・いやぁ嬉しいですなぁ。はい!行きますとも、では さっそく!」
「ニニギさま、どうなさるおつもりで?」
「うむ、ちょっくらサクヤちゃんちに行ってくる」
「サクヤちゃんちって・・・・我らはいかがいたしましょう?」
「ん?お前らはここで待ってろ」
「はっ!」
「クメさん、あんた心配じゃないの?サクヤちゃんちで罠かなにか張ってたらどうするんですか?」
「ニニギ様の心配をしても我らにはどうすることも出来ぬ、無駄であろう」



「おい、聞こえるか?スサエネルギーの出現地が分かったぞ。サクヤちゃんちの裏手にあるツミって大山からだ。いやぁすごいね、こりゃ」
「ニニギさま、大丈夫ですか?」
「僕かい?もちろんだとも。僕はイヅモ系ヤムマト人だ。スサエネルギーの血を受け継いでいるからね。かえって力が増幅しているくらいだよ」
「・・・・!」
「いかなる存在もその生存権を認知せよ」
「は?」
「アマテラス=オモイカネだよ。アシカビとタカミムスヒの絶対命題が生きてるんだ。スサエネルギーの感知と放置はその命題に法っている。マザコンアマテラスが探査船トヨウケのキャプテンと主要乗組員をAIではなく、人間にした意味だ。」
「・・・ですから、どういう?」
「タカチホは人間の手でなんとかしろってことだ!」
「!!」
「コンピューターが無能化してしまうタカチホをヤムマト連合の傘下に治めるためには 僕が適任ってわけだろ?」
「まさに!」
「っつうわけだ。僕はここに残る。お前らさっさとトヨウケに帰れ。その間くらいならクサナギでスサエネルギーを無能化しておいてやる。トヨウケがタカチホから離脱したらクサナギは破壊する。言っとくが、スサエネルギーは増幅してるぞ、僕の影響でな」
「なんですってぇーっ!?」
「それにさ、サクヤちゃんに子が出来た♪」

「こ?・・・って・・子ぉぉ?」



「子・・・って・・・・なんてこと」

「なんだよぉ、文句あんのか?ほら、さっさと去ね!」

「ニニギ様、不肖クメはどこまでもご一緒する所存!お前もだな、オオトモ!」
「え?あ、はぃ・・・もちろんっ!」
「というわけですな、ニニギ様。どのみちトヨウケはスサエネの影響を受ける前にとっとと圏外に脱出するでしょうし」


「ったくお前らもバ・・・」



「ニニギ様、我らもヒトでありますからな」



「・・・そういうことです」
「そうか、そうこなくっちゃな、よし!」



◆探査船トヨウケ統合制御システムオモイカネよりヤムマトマザーアマテラスへ通信◆

惑星タカチホのスサエネルギー消滅確認。
探査船トヨウケは影響圏外に離脱。
キャプテンニニギはクサナギを封印した模様。
探査船トヨウケは任務遂行を確認し、直ちにヤムマトへ帰還いたします。





「ニニギさま・・・これ・・・不老不死の妙薬“イワナガ”ですの。ニニギさまがいかにご長命の神といえど、寿命はございますれば。これを飲めばまこと神のごとく死を免れますわ」
「いらねぇ」
「え?」
「いらねぇよ、そんなもん。いつか死んじまうからこそ今生きているヨロコビってのが有り難いんじゃねぇのか?僕はそう信じている。人間だからな。僕がいつか死んで、サクヤ、お前が僕を懐かしく、愛しく思い出してくれるだけで幸せってもんだ。子供を残すってそういう意味じゃないのか?」
「・・・・」
「サクヤ、お前は好きにしなさい。子供達の行く末を見たいのだろう?」





**** それは「神」が「人に変わった」瞬間であった。 ****